何十年も前、海藻製品が初めて農業者に紹介された時、その作用機作はほとんど何も知られておらず、正当化されるに値しなかったり、誤った前提に立脚するような多くの主張がなされた。たった一つ明らかな発見は、特定の時期に特定の方法で与えられたとき、それらの海藻製品の中には作物の生理的反応を引き起こすものがあるということであった。
当時、海藻製品は、一貫性のない、また混乱した位置付けにより低評価にさらされることになったのである。それから下ること数十年、新しい製品が開発され、科学の多大な発展が実用性の背後にある「真実」を解き明かすことになる。
今日、海藻製品の市場は効果があるということについてはもはや疑いの余地はなく、むしろ一つ一つの製品がどのように違うのか、またどのように、なぜ効果があるのかというところまで成熟してきた。
<海藻製品は肥料なのか?>
一般的に海藻製品の作用機作はその栄養成分の存在に結び付けられることはない。ごくごく濃縮されたパウダー、又は栄養的に強化された形態のものだけが肥料としてみなされる。多くの海藻製品が植物体に栄養を吸い上げたり、体内移動させたりするのを助ける自然の化合物を含んでいるのである。
海藻製品の効果が、植物ホルモンすなわちオーキシン、サイトカイニンそしてジベレリンといったグループの存在で説明されることができることはよく知られている。製造業者の中には海藻の施用が例えば酵素の生産や(生体)防御機能を刺激するなど、細胞レベルでのある反応を引き起こす「誘引」効果理論を支持する者もいる。個々のオーキシン、サイトカイニン、ジベレリンの存在だけでなく、ある(植物ホルモンの)グループの別のグループに対する(存在)割合が作物の反応を引き起こすためには重要であるということは今や周知の事実になってきている。
例を挙げると、オーキシンとサイトカイニンが同じような割合で、高い含量で含まれている製品は作物Aにおいてオーキシンのような反応を引き起こすかもしれないが、作物Bにおいてはサイトカイニンのような反応を引き起こすかもしれない。観察される実際の反応は作物本体におけるオーキシンとサイトカイニンの(存在)レベルによって決定されるであろう。
反対に上記に比べ低いオーキシン含量であるが、サイトカイニンに対するオーキシンの割合がより高い(多い)製品の場合、ほとんど全ての作物においてオーキシンの反応をひき起こすと思われる。
今日、私たちは次のような理由から海藻製品は一つ一つ大きく異なっていると言うことができる。
l 原料について
どの海藻も非常に異なったホルモンレベル、種類を含んでいる。したがって、その生産、収穫の方法次第で、一つ一つの製品はその原料となった海藻の特徴を色濃く反映することになる。
8つの天然のオーキシン、16の天然のサイトカイニンが未知の数のジベレリンとともに海藻において確認されている。異なる種類の海藻におけるSap分析によれば、植物生長調節ホルモングループ内のこれら個別の成分のレベルにも大きな違いがあることが判っている。ジベレリンは最も不安定な植物生長調節グループに属し、製造されてまもなくの海藻製品には高いレベルで同定されるが、時間の経過とともにかなり速いスピードで減衰していくように見える。
l 製造方法
海藻は破裂に耐える弾力を持つ硬い細胞壁によって成り立っている。このような細胞を壊すため、多くの海藻製品は化学的又は熱による消化の工程を用いている。しかるに、これらの工程は原料においても自然に観察できる、かなり安定的なサイトカイニンの活動を保持するのに対し、これらの工程でサイトカイニンが支配的な製品が製造されるとデリケートなオーキシンやジベレリンはより不安定な状態に置かれることになるのである。
これらの非自然的な方法を避けるやり方は、原料の特徴にもよるところであるが、オーキシンが豊富に含まれる製品を生み出すことになるのである。
海藻製品の中には海岸に打ち上げられた海藻から製造されているものもあるが、海の中の海藻が繁茂している場所から収穫された海藻を原料に製造されているものもある。打ち上げられた海藻は微生物の分解にさらされ、活性成分のいくつかは失われているが、収穫後鮮度を保たれすばやく加工された場合はこの負の側面を避けることができるのである。さらに海藻を海中で収穫するケースも大きく次の2つのケースに分けられる。それは、海藻の葉齢、生育ステージといったものに関係なくランダムに収穫してしまう方法と、葉齢や生育ステージに配慮し同じような生長段階のものを収穫する方法である。後者の方法は原料に含まれる活性成分のばらつきを極力なくすことになる。
l 製品の研究
海藻製品市場が成熟してくるにつれて、製品の中には研究の裏付けがほとんど何もないか、全くないかという状態で、またブランドリーダーのように偽ったりする製品が市場に登場し売上を伸ばしたりするようになってくる。より安いコストで似たような効果を約束しており使用者の混乱と不幸を招くこととなる。方や堅実に行うべきを行い、健全な科学的結果を生み出し、多くの作物に対して彼らの製品を使った場合の利益を証明してきた企業もある。
<混乱から何を学び取るか?>
車を購入する際を考えてみよう。私たちは払うコストが少なければ得られる車の価値も少ないということを自然と理解できるだろう。もし、私たちが安全を望むのであれば、保証のきちんとした車を運転するためのプレミアムを支払わねばならないということである。同じ論理を農作業や製品に対する要求にも適用する必要がある。
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